それはきっと、幻だった
「あーおーいっ!」
次の日学校に行くと、すぐに友達の若林美月が駆け寄ってきた。
美月は中学から仲が良く、学校ではだいたい一緒に行動している親友だ。
「おはよ。」
眠たい目をこすりながら挨拶をする。
「ねぇ葵、知ってる?」
美月が声を潜めながら、さらに私との距離を縮めた。
「なに?新しい噂でも仕入れたの?」
半ば呆れながら聞く。
美月がこんなふうな話し方をする時は、たいていそういう時なのだ。
「彩花と木村君別れたらしい。」
そのことか。情報ってまわるの早いな。
なんて感心してしまう。
「あー。知ってるよ。」
「だと思った。でもね続きがあるの。」