それはきっと、幻だった
「いや、そんな顔しないでよ。別にもう吹っ切れてるし。」
私が笑顔でそう言うと、わかりやすくほっとした顔になる。
「木村は?彼女とはどうなの?」
「付き合ってから1回も話せてない。毎日ラインはしてるけど。」
「は?何でよ!」
びっくりして思わず大きな声が出てしまう。
いや、だって。付き合ってもう1ヶ月くらい経つはずなのに。
「なんかなぁ。俺もわかんない。そろそろ別れようかな。」
あっけらかんと答える木村。
「意味わかんない。」
私が吐き捨てるように言うと、木村は困ったような顔で笑っただけだった。