それはきっと、幻だった

キーンコーンカーンコーン

予鈴が鳴った。


「まぁ中途半端なことして傷つけるのは良くないからね。ちゃんと考えなよ?」

それだけ言って、私はいそいで席に着く。木村の彼女の方をチラッと見ると、視線が合ってしまった。

木村の彼女の名前は、中野彩花。
ちょっと天然なところもあるけど、すごくいい子だな、という印象がある。

彩花ちゃんが気まずそうに

『ら、い、ん。』

と私に対して口パクをした。
ラインを見てってことかな?と思ったが、先生が教室に入ってきたので

『あ、と、で、み、る。』

と口パクで伝えた。ちゃんと伝わったかはわからないけど。

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