それはきっと、幻だった
「今日はいちだんと雑だね。」
席につく間もなかった木村が笑いながらそう言って、自分の席に戻って行った。
そのまま木村が自分の荷物を持ち、教室から出ていくのを確認していると、彩花ちゃんが私の席にやって来た。
悲しそうな、少し泣きそうな顔だ。
「相変わらず、仲良いね。」
全く嫌味っぽくない言い方だった。
「中学からの付き合いだからね。」
私も嫌味っぽくならないように気をつけながら、あてさわりのないことを言う。
「相談ってなに?」
私が聞くと、彩花ちゃんはよりいっそう泣きそうな顔をした。