ねこ吉じいさんの宝物

その鈴は、錆び付いていて、とても音が鳴るようには思えないものだった。

でも所々に見える銀色は、傾いた日の光に反射してピカリと眩しく輝く。

「何か、きれいだね」

ララがポツリと呟いて、その鈴を前足で転がした。


チリン……


「え?」

高らかだがどこか柔らかな音が聞こえた。

「その鈴……今、鳴った?」

不思議に思って尋ねるとララも首をかしげて、もう一度、鈴を……


チリン…チリン…

「鳴った!!」

波の音にかき消されてしまいそうなそれは、思いもよらず美しく。


「ねぇ、お姉ちゃん。歌声みたい」

ララは何度も転がして、うっとりと耳を傾けた。



「テト、ララや。何をしてるんじゃ」

いつまでも動かない私たちにしびれを切らしたのか、じいがこちらに歩いてきた。


「じーぃー、ねぇ、これ見てよ」

「なんじゃね」


じいに見えるようにララが鈴をくわえると、その音はさっきよりも大きく響いた。


すると、その途端、じいの垂れ下がっていた耳がぴくりと反応した。

少し驚いたような顔をして、じいは恐る恐ると近づく。


「ああ、これは……」

「どうしたの?じい」

その鈴を見ていたじいの目は、何か懐かしむような、温かさを秘めた目だった。

< 20 / 35 >

この作品をシェア

pagetop