ねこ吉じいさんの宝物
その鈴は、錆び付いていて、とても音が鳴るようには思えないものだった。
でも所々に見える銀色は、傾いた日の光に反射してピカリと眩しく輝く。
「何か、きれいだね」
ララがポツリと呟いて、その鈴を前足で転がした。
チリン……
「え?」
高らかだがどこか柔らかな音が聞こえた。
「その鈴……今、鳴った?」
不思議に思って尋ねるとララも首をかしげて、もう一度、鈴を……
チリン…チリン…
「鳴った!!」
波の音にかき消されてしまいそうなそれは、思いもよらず美しく。
「ねぇ、お姉ちゃん。歌声みたい」
ララは何度も転がして、うっとりと耳を傾けた。
「テト、ララや。何をしてるんじゃ」
いつまでも動かない私たちにしびれを切らしたのか、じいがこちらに歩いてきた。
「じーぃー、ねぇ、これ見てよ」
「なんじゃね」
じいに見えるようにララが鈴をくわえると、その音はさっきよりも大きく響いた。
すると、その途端、じいの垂れ下がっていた耳がぴくりと反応した。
少し驚いたような顔をして、じいは恐る恐ると近づく。
「ああ、これは……」
「どうしたの?じい」
その鈴を見ていたじいの目は、何か懐かしむような、温かさを秘めた目だった。