ねこ吉じいさんの宝物
――伝えなきゃいけないことがある。

前におじさんは悲しそうな顔でそう言っていた。

じいの着ているビニールがかさかさとざわめくように、私の胸も何か変な感じになる。

「何度も伝えようとしたけど、その度に僕はためらってしまうんだ」

おじさんは枯れた芝に伏せて、ちょんと落ち葉をつつく。

北風に混じった小さなつむじ風が、その葉を街の方にさらっていってしまった。

「テトちゃん?」

おじさんの声が少し遠くに聞こえた。

「おじさん、私たちはじいのことなんにも知らないの」

気付いたらいつも思ってることが口をついて出てて、ついでに悲しい気持ちも込み上げてきた。

「そっか……」

おじさんは私の気持ちを悟ったようで、長い瞬きを一度したあと、静かに語り出した。
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