またあう日まで


ここにはいないけど、お父さんもお母さんも死んだ訳ではなくて、仕事の都合で海外にいる。
隆兄は自分の仕事があるにも関わらず、私と一緒に暮らしてくれることになった。

何だかんだで良い人ではある。
なかなか変わってるけど。

…今日もし一人だったら、今頃大泣きしてたのかなー…

ああぁ、このネガティブ思考ほんとにどうにかしたい。
生まれつきのものって治らないよね。

明日からは早速新しい学校だし、不安以外の言葉が思い浮かばない…


「…お嬢さん。」

「わあっ!!?だ、だだだ誰!?」

「そんな驚かんでも良いじゃろに…」

いやいやいや、門のところから目だけ見えてる状態で驚くなっていう方が無理がある。

「ご、ごめんなさい…?」

「謝らなくていいんじゃよ。なんせ、えらい久しぶりに隣が騒がしくて、気になっただけじゃから。……引っ越し、してきはったん?」

隣…ってことは、この人はお隣さんなのかな?
はっ、確かに今思えば、近所の人ろくに挨拶もしてないし、めちゃくちゃ失礼しちゃってた……

「す、すいませんっ!!ご挨拶が遅れてしまって…。
今日からここに兄と2人で住ませていただきます、綺島沙華と言います。良かったらまたこの町のこととか色々教えてください!」

「そうかいそうかい。お行儀ええお嬢さんやねぇ。ここの町の人たちは皆家族みたいなものやから、何でも言うてなぁ、力になれる思うよ。」

優しい声、優しい言葉。
おばあちゃんがいたらきっとこんな感じなんだろうな。

「……ありがとうございます。」

「いやいや、私も急にすまんねぇ。今日はもう遅いし、また今度家に遊びにおいでな。」


そう言って微笑んでくれたおばあちゃん。
軽い別れの挨拶をして、家に入った。
ご飯のいいにおいがする。


慣れない土地でまだまだ不安はあるけど

お引っ越し初日は、いい感じみたいだ。
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