麗しき日々
 どのくらい時間が経ったのだろうか? 

 並んで座る副社長が気になるが、まともに目を向けられない。


「なぁ、湖波……」

 副社長の手がそっと、私の手に触れ胸がドッキっと音を立てた……


 でも……


「まだ、開かないんですかね?」


「そうだな?」

 あまり興味の無い口ぶりで、副社長の返事が返ってきた。


 副社長が何か言いたそうだが……


「まだ、開かないかな?」


 私は落ち着かず、もぞもぞしてしまう。

 もう、だいぶ前からトイレを我慢しているのだ! 

 だんだん余裕が無くなって来ている。



「どうした?」

 副社長が怪訝そうに見るが、まさか、言えない……


 でも、もう、我慢できない……


 副社長は、私の様子に、目を見開くと慌ててスマホを手にした。


「おい! すぐ開けろ!」


 副社長の声とともに、倉庫に電気が点きドアが開いた。


 慌てて、ドアへ向かって走ろうとした時、後ろでバサッと何かが落ちる音がした。


 買い物袋を待ちあげた副社長が慌てて拾おうとしたのは、私が初めて見た物だ。

 勿論使った事もないが、雑誌か何かで見た、コンドームってやつだ…… 

 どういう事? 


 私は副社長をギッと睨んだが、それどころでなく、ドアを開けて立っていた栗林さんの前を、物凄い勢いで通り過ぎて、トイレへと向った。


 なんとも言えない苦しさから解放され、だんだんと意識が戻ってくる。


 一体さっきの物は何? 


 なんであんな者が、買い物袋の中に? 


 それに、どうして副社長の一言でドアが開くのよ?
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