麗しき日々
 私の不安は、確実に私達に近づいてきていた。

 偶然にも通りかかった正面玄関に、高級車が一台止まった。

 勿論、珍し事では無いのだが、車から降りて来たのは、高そうな品の良いワンピースに身を包んだ、お嬢様という言葉がふさわしい女性が、受付へと向かって行った。


 私は、何故か胸の中がざわつき、その女性から目が離せなかった。


「秋吉と申します。副社長にお会いしたいのですが」

 私は、その女性に、綺麗で嫌味のない印象を受けた。


「少々お待ち下さい」

 受付嬢は、電話を取った。


 私は、何故だか、副社長が彼女と合わない事を心の中で強く願ってしまっていた。


 しかし……


「ご案内いたします」


 受付嬢は秋吉という女性をエレベーターへと案内した。


 秋吉……


 私の記憶が正しければ、秋吉グループとは大手取引会社で、社長同士が古い友人だという噂もある……


 私に、奇跡が起きて入る事が出来た、大手企業……


 副社長は、その会社を背負っている……


 私は、高い吹き抜けのロビーを見上げた……
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