麗しき日々
 私は、仕事が終わると、副社長のマンションの前まで来ていた。

 正直言えば、婚約者の話など嘘だと言って欲しい。

 私だけを愛していると言って欲しい。



 しかし……

 マンションの入口で立ちつくしているのは、秋吉玲奈の姿だった。


 真っ白になった頭のまま、後ず去りを始めた時だった。


「あなた? 颯太さんの彼女ですか?」

 逃げるのが恥ずかしくなるような、あどけない瞳を向けられた。


「え? い、いえ……」

 なんと言っていいのか分からない……


「ごめんなさい…… ここで待っていればお会い出来るかと思って……」


「えっ? 私に?」

 思わず声を上げてしまった。



「ごめんなさい…… 驚きますよね? でも、どうしてもお話ししたくて……」


「は、はあ……」


 私は、状況が読みとれないまま返事をするしかなかった。
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