麗しき日々
「ああ。玲奈には、ちゃんと話した。両親も、婚約しなくても今まで通りの、信頼関係を続けて行くと約束してくれたから、大丈夫だ……」


「よかった……」

思わず涙が溢れる。


「玲奈は妹みたいな存在だから、恋愛は出来ないよ。きちんと玲奈にも分かってもらったから……」



「そうだったの……」


 体の力が抜けて行く……


「ああ……」


 副社長は深く肯く……




「でも、私なんかじゃ、無理だよ……」



うつむく私の顔を、副社長が両手で頬を包んで顔を上に向かせた。



「湖波が、この会社に入れるなんて奇跡だって言った時から、俺の運命は変わったんだ…… だから、これから、楽な事ばかりの約束は出来ないけど、どんな事があっても、湖波のそばにいる…… きっと、幸せがもっともっと深くなるから……」


「副社長……」

 私の目から涙が溢れた……



「だから、俺と結婚しようなぁ」



「ちょ、ちょっと、どうしていつも勝手に決めるのよ!」



「えっ? 嫌だった?」


 副社長は、意地悪な笑みを見せた。



「い、嫌じゃないけど……」



 そう言った瞬間、立ちくらみがして副社長の胸に支えられた。



「おい。顔色悪いけどだいじょうぶか?……」



「……」

 気分が悪い……



「少し休むか?」


 副社長がそっと、ソファーに座らせてくれた。



 私は、じっと副社長の目を見た。


「どうした?」


 私の大好きな人の声……


 奇跡なのかもしれないが……



「お腹に…… 赤ちゃんがいるの……」




 私は消えそうな小さな声で言った。


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