麗しき日々
「ええ! 俺の?」


 私は黙って肯いた。



 すると、副社長はギュウッと私を抱きしめた。



「バカだな…… なんでもっと早く言わなかったんだ…… こんなに無理して……」


 副社長は泣きながら、私を優しく抱きしめている。


「ごめんなさい……」


「俺、今、めちゃくちゃ幸せ……」


 副社長がそう言うと……




 パチパチと、ソファーの後ろからの拍手の音に振り向いた。


 そこには、栗林さんが立っていた。


「おめでとうございす」


 そして、河合さんと香が並んで拍手を始めた。



「もう、副社長が湖波に黙っていてくれって言うから大変だったわ」


「えっ、知っていたの?」


 私は驚いて三人を見た。



「婚約者の名前隠しながらの準備は大変だったんだぞ…… それに、妊娠の事は副社長に黙ってなきゃだし…… 変な婚約パーティだな?」


 河合さんは、面白くなさそうに言うが、顔は笑っていた。



 そして、次から次へと、拍手の数が増える。


 婚約パーティの準備をしていた社員達が、拍手へと加わってきた。


「おめでとうござます」


 みんな、知っていたんだ……


「も―っ!」

少し怒れて、副社長を睨んだが……


「お互いさまだ……」

 涙目の副社長が言った。


 みんなの拍手が嬉しくて……


 幸せで……
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