麗しき日々
仕組まれた恋
次の日、ロビーが騒がしく人だかりが出来ていた。
掲示板に、辞令の紙が張り出されている。
ええ―っ。
もう、決まったの……
完全に自分の事だと思い、恐る恐る近づくと、辞令に書かれている名前は、西野明美となっている。
さすがにクビでは無いが、地方の小さな事務所に異動となっていた。
一体どういう事なのだろう?
ふと辺りを見回すと、栗林さんがこちらを見て、ニコリと頭を下げた。
私も頭を下げたが……
突然の明美の異動、栗林さんの仕業なのだろうか?
人だかりの中に、呆然と立ち尽くす明美の姿があったが、誰一人、明美に声を掛ける者はいなかった。
受付で並ぶ女子社員達が、晴々した笑顔を見せているのは気のせいだろうか?
しかし、次は私の処分の番だ……
今日で無かったが、明日かもしれない。
だが、いくら経っても、私の処分が張り出される事は無かった。
副社長の、相変わらず無表情にテキパキと仕事を熟す姿を時々見かける。
チラリと、こちらを見る気もするが、あえて振り向かずにその場を通り過ぎた。
無表情でクールな副社長……
副社長室での自分勝手な副社長……
そして、私が想いを寄せた、三年前の副社長……
あの人は、一体……
副社長の背中を見た。