羽化

わたしと貴司は付き合い始めてもうすぐ五ヶ月になるが、これだけの期間お付き合いしていながら、わたしたちは未だデートらしいデートをしたことがない。

カップルらしいイベントごとを、まだなにもやっていなかったのだ。

これは不満である。

すこぶる不安である。

十代のころならいざ知らず、もうお互いに二十四。

身も心も立派に大人。

どんな間違いが起こっても、自己責任でどうぞなお年頃。

だというのに、わたしたちはつながりが傍目にわかりにくすぎる!

そこで、ここは初心に返ってウブだったあの頃を思い出しながらこんなことをやってみようか、という思惑がひとつ。

もうひとつは、もっと大人の理由である。

わたしたちはいわゆる、社内恋愛という間柄だ。

社内恋愛禁止なんて決まりがあるわけじゃないけど、人目をはばかる常識ぐらいはわたしも貴司も持ち合わせている。

でもそうなると必然、会社では話す機会がほとんどなくなってしまう。

だけどちょっと待ってはいストップ。

それはやっぱり不満である。

まったくまったく不安である。

だって、コミュニケーション不足は恋人同士であるまじきことではないでしょうか!

しからばこその交換日記。

これならすっと渡してさっと読める。

人目をはばかる必要もなしなのだ。

これはまったく超べんり。

ふたりの愛の再確認間違いなし!

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