羽化
定元君が選んだ店はなかなか落ち着いた印象で、どう考えても今のわたしたちはその店内の雰囲気からは浮いていたが、吉田も和美も定元君も、ついでにいえば隣の彼も誰もそんなことは気にしていないようで、飲みたいように飲み、それでハイになってギャハハと大きな声で笑っていた。

わたしは半分ほどになったカクテルの中に浮いているレモンのスライスをストローでいじくりながら、熱くなった顔を冷やすように頬杖をついた。

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