羽化
気が付けば辺りの景色が一変していた。
わたしの隣にいるはずの貴司が、何故か和美に変わっていた。
……いや、単に席替えが行われただけなんだろうが。
「あぁ、ねぼすけ。やっと起きたかぁ?」
と和美。
どうやらわたしは、ちょっとばかりうつらうつらしてしまったらしい。
「あれ、席替わったの?」
酔いはさめたものの、ぼうっとする頭をとんとん叩きつつたずねてみた。
「なーんか、あたしら軽くハブ。吉田に定元君も、あんたの彼氏も付きっきり。若いコがいいのかね、やっぱ」
見れば、向かいの席では吉田を囲むように貴司と定元君が座っていた。
「気ぃつけないと、若いのに盗られちゃうよ。吉水君」
なにを馬鹿なことを。
「今日初めて会ったってのに、そんなこと……」
「だから危険なんでしょうが。初めて会ったってことは、お互いゼロの、イーブンなわけでしょ? だから、そっからどう転ぶかわからないんじゃない。吉水君だって男よ? 慣れた女より、鮮度が高くて、新鮮に話せる若い雌のが気分も上がるってもんでしょ」
「え……」
私の顔からさっと血の気が引いていく。
ぼうっとしてた目も一気に覚めた。