羽化
貴司の表情を伺う。
……普通だ。
やましいことを考えてそうには見えない。
でも待って?
じゃあなんでわざわざこんな席替えなんてしたの?
そもそも誰が言い出したの?
実質(隣の状況的に)替わってるのは貴司と和美だけだ。
じゃあ誰?
和美?
いや、いま和美はハブられ気味だと言った。
わざわざ男の隣の席を譲るひとり身女の和美じゃないはずだ。
だったら?
……ああ。
うそ。そんな馬鹿な。
こんな天変地異!
貴司なの?
わたしを置き去りにして、若い女のもとへ行ってしまったというの?
そんな……、そんな……。
わたしが愕然としていると、和美は堰を切ったように笑い出した。
「由加里、なんて顔してんの。ばーか。吉水君に他の女に手を出すような甲斐性あるわけないでしょ。誘ったのは吉田。なんか、日頃の不満を、この酔った勢いで、かましてやろうとしたみたい」
なんだそれ。