羽化

――そして正面から聞こえてきた会話。



「そうかな。僕は一生懸命やってるつもりなんだよ」

「ダメなんです! 周りに流される仕事のしかたはダメなんです。わかっているんでしょう? こうするのが正しくって、こっちは間違ってるとか、全部」

「でもねぇ吉田さん、周りの顔をたてるってのも、大事なことなんだよ。だって、目上のひとの面目潰すわけにもいかないでしょ?」

「自分が一番大事なんです! 吉水さんは甘いんです。こうやるのが正しいって思ったら、わかってるんなら、言ってしまうのが一番いいに決まってます!」



何故か新人平社員吉田は、中堅係長貴司に仕事について指導していた。

「だから、『あたしら』って言ったでしょ? ほんとは定元君もハブられてんの」

なんだか可笑しそうにくくくっと笑う和美。

もう一回いっちゃおう。


なんだそれ。

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