羽化
そして――
ざく。ざく。ざく。
静かな公園の中にあって、わたしのスコップを使う音だけが響く。
じきに額から汗が流れ始める。
前髪がぺっとりと顔にくっついて、うっとうしいことこのうえない。
ざく。ざく。ざく。
来月中に美容院に行こうと思っているけれど、月末までお金を使えない。
お金に余裕のある金欠。
ざく。ざく。ざく。
だから今年もこうしてお金のかからない恒例を催して、本番にむけて予行練習。
ざく。ざく。ざく。
真夏になる少し前。こうして今年も、
「……あ、いたいた」
わたしは“彼”をつまみ出す。
――頭上では相変わらず、けたたましいセミの声。
わたしはそれに応えるようにほうとひと息ついて立ち上がり、
「ごめんねえ。あんたらの兄弟、今年もちょっとのあいだだけ借りるよ」
と、大きな高い太陽を浴びながら一生懸命鳴きつづける彼らに手を振った。
そして、バケツにほった土を入れて、今つまみ出した“彼”に失礼のないようベッドをこしらえた。