羽化
講習に出てしまい仕事場で会わなくなってから、吉田とはちょくちょくメールをやりとりするようになった。
『どうだった? 今日』
『今日は開発課で、いろいろ実験させてもらいました』
『開発課? 押井君っているよね。彼どうだった? 真面目にやってた?』
『押井さん……ちょっと顔わかんないです。(すいません)私の担当してくださったのは、江本さんって方でした』
『ごめん。わたしはそっちが顔うかばない。何年目の人?』
『きいてないです。女の方に年齢きくのは、ちょっと』
『もしかして、メガネの女の人?』
『そうですよ。物腰柔らかで、石野さんにちょっと似てました』
『ちょっと、わたしまだ二十四だよ。そんな大先輩といっしょくたにしないでくれる』
『お子さんがふたりいるんですって』
『うそー。結婚してたんだあの人』
『失礼です! 私ちょっとお風呂入ってきます』
こんな他愛ないやりとりを毎日一時間ほどする。
それである日、こんなメールが送られてきた。
『どうしましょう。どうもこうもないんです! 石野さーん!』
私は何事かと思って、すぐに『どうしたの』と返信する。
すると、一分経たずに返事が来た。
『明日、営業課で、担当定元さんですー』
それにわたしが、
『あっちゃー気まずくて仕方ないだろうなぁ』
と返信すると、
『どうしてですかぁ! 担当が知ってる人なんてラッキーじゃないですかー』
と返事が来た。
わたしは、やっぱこいつ若いなぁ、と思った。