羽化
「なにそれ……」
なにそれだ。
本当なんだよそれ。
突然すぎる。
いきなりすぎる。
しかもなんで今日?
昨日までなにも言わなくて、わたしとの交換日記にだって、なにも、なにも、そんな兆候、見せてくれていなかったってのに!
「会って直接言いたかった。だから日記にはなんにも書かなかった。本当は、このあいだから言おうって思ってた。でも由加里ちゃん、日記渡したらすぐ仕事行っちゃうし。だから今日は……、今日なら言えるって思って、待ってた」
「わけわかんない……」
今日なら言える?
……それこそ意味がわからない。
今日こそ、今日だからこそ、そんなこと言わないでよ!
「なんで……別れるの?」
わたしは震える唇を噛みしめながら、やっと訊いた。
それに貴司は、
「……好きな人ができたから」
なんて、なんて勝手なことばを返してくれた。
「なによそれ……。わたしは、好きな人じゃ……なかったわけ?」
馬鹿みたいに、勝手に嗚咽が込み上がってくる。