羽化

「……吉田」

『はい。もちろんそんなの、断りましたから! 失礼ですよ。付き合ってる人がいるのに、他の人間に告白してくるなんて!』

「ううん。もう付き合ってない。わたしたち、別れたから」

『え……?』

「吉田、けっこう貴司のこと気にかけてくれてたもんね。だから、好かれちゃったんじゃん?」

『石野さん、なに言ってんですか!』

「………ごめん。今、あんたと……まともに話せそうにない。……切るね」

吉田がまだ何か言っているのに構わず、わたしは電話の通話終了ボタンを押し、そのまま電源を切った。


……なんだかとても天井が遠くて、枕が恋しかった。

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