羽化
しょうがないので、わたしは吉田に加勢してやることにした。
「ホント、そんなのよく見つけてきたね。どこにあったの?」
わたしのひと言に舌打ちする和美と、ぽかんとする吉田。
「吉田。あれ、おやつだよ。あの筒、そっと吹くと煙みたいにラムネの粉が舞うの」
「え? あ……あーっ!」
「あら、バレました?」
騙されたことに気付きコーヒーを握りつぶしそうになる吉田と、ぱきん、と煙草型ラムネ菓子をへし折って、口へ放り込む和美。
「わたしも朝、やられたからね」
わたしが言うと、和美はえくぼをこしらえて笑った。
そうすると幼く見えるから、つい気が緩んでしまいそうになる。
「また吉水君の後始末だってね。ごくろうさん」
和美は話題を逸らそうと、そう言いつつ小銭を自販機に放り込んでジュースを選んだ。
吉田ももう引きずる気もないようで、
「そうなんですよー。中川さん、聞いてください!」
と、さらなる苛立ちをぶつけるようにわたしに流し目で彼女にむけて身を乗り出した。
――なんだよ。今の今まで忘れてたくせに。
わたしはその内心をおくびにも出さずに、またひと口、コーヒーをちびりとやる。
それからしばし、和美と吉田は吉水貴司の愚痴をこぼし続けた。
正直、居心地のいいものではなかった。
なんでこのふたり、こうもあっけらかんと他人を愚痴れるんだろう。
それもわざわざわたしのいる前で。
ほんとう、その神経を疑わずにいられない。