野獣は甘噛みで跡を残す
Ⅰ………再会×beforeafter
明らかに二日酔いの体は一体全体どういうことか、見たこともない男物のロングティーシャツだけを着ていた。
もう生足を出す勇気がなくなってからはスカートよりパンツ派になったせいか、久し振りの膝丈にすーすーする。
築23年、1DKのアパートとは違い明らかに家賃が高そう、白で統一されただだっ広い寝室は見たこともない部屋で、恐る恐る真っ白なドアを押した───ならば、珈琲の匂いと、やっぱりだだっ広いリビングが視覚と嗅覚に飛び込んできたじゃないか。
大きな窓から朝日が入り、寝室と同様白で統一されたリビングはけれど、必要最低限なものしかなくて、がらんとした印象。
例えば異世界だと言われたほうがまだしっくりくるほど、何がどうやって私は今ここにいるのかが全く分からなくて、寝室の前でただ突っ立ていた。
「あら、目が覚めた?」
不意に少し気怠い低音が鼓膜に触れ、顔だけを左へ向けると、前髪をポンパドールにした男がTシャツにサルエルパンツといったラフな格好でいた。
「気分は悪くない? 頭痛は?」
男、だと思う男は女のような口調で問いかけてくる。
綺麗な顔をしたその表情はいたって無表情。
「………あの、どちら様ですか?」
まるで知り合いかのような調子で接してくる男を凝視し、質問に質問で返す私を見て「あ?」といった風に眉を顰めたその表情にはけれど見覚えがあった。
あったけど、どこで見たのかさっぱり分からない。
もしかしたら夢で見たのかも。
「ちょっとアンタ、それ本気で言ってんの?」
「えっ?」
女のような口調ではなく完全に女言葉を操りながら、突然男が早足で歩み寄ってきて、至近距離から私を見下ろしてくるものだから思わず後退しようとする。
もう生足を出す勇気がなくなってからはスカートよりパンツ派になったせいか、久し振りの膝丈にすーすーする。
築23年、1DKのアパートとは違い明らかに家賃が高そう、白で統一されただだっ広い寝室は見たこともない部屋で、恐る恐る真っ白なドアを押した───ならば、珈琲の匂いと、やっぱりだだっ広いリビングが視覚と嗅覚に飛び込んできたじゃないか。
大きな窓から朝日が入り、寝室と同様白で統一されたリビングはけれど、必要最低限なものしかなくて、がらんとした印象。
例えば異世界だと言われたほうがまだしっくりくるほど、何がどうやって私は今ここにいるのかが全く分からなくて、寝室の前でただ突っ立ていた。
「あら、目が覚めた?」
不意に少し気怠い低音が鼓膜に触れ、顔だけを左へ向けると、前髪をポンパドールにした男がTシャツにサルエルパンツといったラフな格好でいた。
「気分は悪くない? 頭痛は?」
男、だと思う男は女のような口調で問いかけてくる。
綺麗な顔をしたその表情はいたって無表情。
「………あの、どちら様ですか?」
まるで知り合いかのような調子で接してくる男を凝視し、質問に質問で返す私を見て「あ?」といった風に眉を顰めたその表情にはけれど見覚えがあった。
あったけど、どこで見たのかさっぱり分からない。
もしかしたら夢で見たのかも。
「ちょっとアンタ、それ本気で言ってんの?」
「えっ?」
女のような口調ではなく完全に女言葉を操りながら、突然男が早足で歩み寄ってきて、至近距離から私を見下ろしてくるものだから思わず後退しようとする。