【完】V.I.P〜今宵、貴方だけの私になる〜

彼女は、一度こうだと決めたらなかなかその決意を曲げることをしない。

そういう性格も俺の気に入っている所で、人として惹かれたからこそ、秘書としての地位を託した。

彼女の秘書としての才能は、俺が思う以上に素晴らしく長けていたから、余計だけれど…。


もしも、このまま彼女を失ったらと、思うだけで心底ゾッとする。
執務室に篭った彼女を思って俺はもう一度深い深い溜息を吐いた。

『綾小路…』


ほんの少しだけ大人気なかったとも思う…。
そう呼んだことを後悔する程、歪んだ彼女の表情。


辞表について取り合うつもりはなかったけれど、彼女にそんな顔をさせるつもりは毛頭なかった。





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