【完】V.I.P〜今宵、貴方だけの私になる〜
「要人?!なんですぐに私の電話に出ないのよ!私の連絡には必ず直でやり取りして頂戴って何度言わせるの?!」
その容赦ない物言いに、俺は溜息を吐く。
「…マスミ。朝からキャンキャン騒ぐなよ。悪かったから。けれど、それなら俺のスマホに直接アポを取れば良かったろう?」
「あら…それもそうね。言われてみれば。そんなことコロッと忘れていたわ」
「ははっ。お前らしいな、何時もながらに間抜けてる」
そう返した俺に対して、電話の向こうでは鼻歌でも歌うかのように軽やかな口調で、その先を続けた。
「まぁー、生意気。あんた、いつからそんなに可愛くない男になっちゃったのかしらねーぇ?」
「お前に可愛いと思われても嬉しくない」
ふんっと鼻で笑って切り替えす。
それでも、彼女…マスミは動じることなく更に話を続けた。
「まぁ、そんなことどうでもいいわ。今日は真面目な話よ」
「全く。暫くろくに連絡も寄越さなかったのに、なんなんだ?」
「ねぇ、要人?例の子会社の経営…あれもう少し規模を大きくして展開したいの。だから、任せてくれない?私に」
俺は彼女の言葉に思わずデスクチェアから立ち上がり、窓際まで歩いていく。