【完】V.I.P〜今宵、貴方だけの私になる〜
「お前が?一体どういう風の吹き回しだ?今までそんなポジションになんて、関わりを持ちたくないと散々言っていたのに?」
俺の問い掛けに、彼女が息を飲んだのを感じる。
「そ、うなんだけど…。気が変わったというか。その…色々変えざるを得なくて…」
「なに?その理由次第ではYESも有り得るが…これは身内だとしても、きちんとしたビジネスの話だからな、マスミ?」
「…………」
珍しい彼女からの沈黙に、俺も静かに間を空けた。
それから数秒。
少しばかり痺れを切らして、何か言おうとした俺が口を開く前に、彼女が漸く言葉を発した。
「……たの」
「は…?」
「だから、妊娠したの!結婚するのよ、私。でも…」
そう言い淀む彼女。
理解するまでに暫く時間が掛かり、それでも唖然としていると、半ばキレ気味に彼女はこう言って来た。
「彼が…ケインが。私に『ちゃんと仕事が出来ない女性とはフェアになれないから』って。『子供はちゃんと育てられても、社会的自立が出来ない女性じゃダメだ』って言うんだもの…!仕方がないじゃない……」
と、最後は小さくムクれた声を出した。
俺はそんな彼女を心底らしいと思い、思わず吹き出す。