【完】V.I.P〜今宵、貴方だけの私になる〜
…彼女がこの愛に燃え上がるのならば、それの受け皿になろう。
その為に、此処に俺がいるのだから…。
そうだ…。
この際だから、彼女を同席させた時に、既成事実として身内に紹介してしまうのもいいかもれない。
こんなに拗れている今、彼女を手元に繋ぎ止めておくには、少々荒っぽいくらいのことをしても、罰は当たらない…はず。
そんな風に、都合よく解釈をして、俺は彼女がスケジューリングしてくれた通り、淡々と仕事に打ち込んだ。
「よし。これで大体の目処はついたな」
そう呟いて、パソコンの画面を閉じてグッと背伸びをした。
思った以上にタイトな時間を過ごしたが、元々仕事中毒な人間だから、さほど辛いとは思わない。
「一応、身支度だけ整えておくか…」
俺はまだ仕事をしているだろう彼女に似合いそうなワンピースを、頭の中であれこれ考えた。
淡い色合いも似合うが、彼女は深い色味のドレスも似合うだろう。
そんなことを思って、彼女に声を掛けようとしたが、驚かせたい気持ちが勝ってそのまま一人で部屋を出る。
確か会社のビルの目の前に、新しくブティックが出来たと思った。
其処で彼女を着飾る全ての物を取り揃えよう。
まさか、その数分の間に、彼女から別れを告げられるとは思わずに…。