【完】V.I.P〜今宵、貴方だけの私になる〜

「…くそっ」

強く呟き、俺は上着を羽織る時間も惜しいとばかりに、部屋を飛び出した。

スマホを手にするも、電源は切られているか、それとも拒否をされているのか繋がらず、今何処にいるのか皆目検討もつかない。

「忍…何処にいる…?」

車に乗り込んだ俺は、ハンドルを握り締めてその名を呼んだ。

こんな余裕のない愛は未知の領域でしかなく、感覚がマヒする。
其処まで追い込んでしまったのは、他の誰でもない俺なのだろうけど…。

『弱い』だなんて…。
『狡い』だなんて…。


そんな風な女性だと、彼女を思ったことは一度もなければ、感じたこともない。

なのに、彼女は…文面でもまた、泣いていた…。




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