【完】V.I.P〜今宵、貴方だけの私になる〜
たとえ勝手だと言われたって、この先に隣りに居てほしいのは彼女しかいない。
しょうがないじゃないか、それくらい愛してしまったのだから…。
時間とか理由とか全て取っ払って…
だめなんだ。
むねがどうやったって苦しくて切ない。
彼女がいない夜を考えただけで、身も心も冷たくなっていく。
こんな風な俺を、他の誰でもない貴女に救って欲しい。
「どこにいる…?忍…」
ギリッと奥歯を噛み締めて、俺はキツくハンドルを握ると、彼女のマンションのエントランスホールを見つめ続けた。
それから更に数時間。
マスミとの約束も、「人生の一大事」なんだと言い切ってキャンセルし、彼女の帰りを辛抱強く待っていると、フラフラと疲れ切った様子の彼女が視界に入った。
「し…っ」
その姿を見て、名前を呼ぼうとしたけれど、あまりにも小さく見えて今にも消えてしまいそうで、声よりも先に体が動いた。
バタンッ
ドアが壊れてしまうくらいに派手な音を立てて、俺は車から外に出ると、彼女の腕を掴んで自分の胸元へと引き寄せる。
口から出た言葉は、焦れた時間のせいでキツくなってしまう。
「バカが!あんな置き手紙を残しておいて、そんなに泣くくらいなら、今すぐ俺の所に来い!」
腹が立った。
俺から離れようとした彼女にも、そんな彼女を泣かせた自分にも…。
彼女は、驚いた顔して、信じられないと言った風に、身を強張らせる。
心がキリキリと音を立てた。
だめなんだ、このまま二人…出逢わなかった頃になんて戻れるわけがないだろう…?
辛いんだ……。