【完】V.I.P〜今宵、貴方だけの私になる〜
そんな気持ちも知らずに、彼女はなんとか俺から離れようとするけれど、俺は熱量を込めた視線で彼女を捕えた。
混乱状態の彼女は、何かを勘違いしているようで、いやいやばかりを繰り返す。
これでさよならになんて出来るものか。
俺は彼女へ一つ一つのキスで心を溶かすつもりで、モヤモヤした気持ちを全て解放するように、有無を言わさずに細い背中に腕を回した。
…なんでもないような素振りで、心のドアは叩くことなんて出来やしないんだ…そうだろう…?
仔猫のように気まぐれでしなやかで、危なっかしい…。
それでも、愛しくて堪らないヒト。
泣きじゃくる彼女を全身で抱き締めて、髪に、頬に、その全てに愛を散りばめる。
完璧な愛なんて、もう…この手に余るだけでしかなくて。
両手の測りに掛けても、もう彼女との間に壁なんて作りたくない…。
今、後悔するくらいなら…甘い時を二人分け合って、曖昧な線引きをする前に抱き尽くそう。
大体、俺の気持ちを散々煽るくせに、触れられたくないたなんて、それこそ狡いだろう?