【完】V.I.P〜今宵、貴方だけの私になる〜
第四章『密やかなひそやかな恋』
いい子になんてなれない side:忍
一度知ってしまった彼の肌の熱さ、指の動き…。
それはもう、後には引けない想いを駆られるようで。
いい子になんてなれない。
心からもっと愛されたい。
息が止まるまで、もっと。
溺れて前が見えなくなるまで…。
呼吸も忘れるくらいの時間は、もどかしいくらい長いようで短くて、果てても果てても飽きることなく、私を求めてくれる彼が涙が出る程愛しくて…それに応えようと懸命に彼の体に自分の温度を焼き付けた。
密やかに、膨らませ続けた恋ゴコロ。
こんな風になる前は、彼の過去の恋愛にさえ嫉妬した。
自分でも気付かない所で、理由も分からず泣きたくなることもあった。
「か、なめさ…っ、もう…むり…」
「はっ…忍、まだもう少しだけ…」
互いの荒い呼吸の中で、手を取り合いながら、もう一度キスを交わし合う。
ジリジリと重くなる感情は、目の裏で弾けることを期待している…。
ぽたり
自分の頬に滴り落ちて来た彼の汗が、これが現実なんだと教えてくれて、私は瞳を潤ませ、彼の名前を小さく囁いた。
「要人さん…好き」
「あぁ…俺も…」
キスは止まることを知らない。
このまま此処に身を投げて、愛で満たされていたい。