【完】V.I.P〜今宵、貴方だけの私になる〜
「好き…」
やっと言えた、本音。
隠していたはずの仮面は服と同じく彼に剥がされ、無防備な素顔に、真っ直ぐな視線を注がれた。
「好きだ…忍。他の誰かじゃない、お前だけを…」
そう言って額にキスを落とされ、不意に泣きたくなった。
傍にいたい。
もっとずっと近い所で。
好きだと気付けば、止まることすら出来ない…まるで子供のような恋。
今まで、全て『決められた』レールの上を歩いて来た。
それが当たり前のことだと思って来た。
それなのに、彼と出逢い、恋をしたことで、全てが180度変わってしまった。
もう、戻れない。
あの頃の自分には…。
精一杯演じてた"いい子"になんて戻れない。
聞き分けの良いだけの、ただの女になんて…。
貴方を知らないままの自分には、もう…戻らない。