【完】V.I.P〜今宵、貴方だけの私になる〜
「……ほんとに、セクハラが過ぎますよ。これ、私じゃなかったら、大問題です。他の人なら今頃…」
「綾小路にしか言わないさ」
「は?」
「いいや。…じゃ、こっちに貸して。サインする」
一体この男の思考はどうなっているんだろう。
覗いてみたい、気がしないでもない…。
そうは思いつつ、サラサラとサインをしていく彼の指先を見つめた。
いや、何故か、そこに惹き寄せられた。
「……指、キレイ、ですね…」
「…ふーん?…少しは俺に興味でも持ったか?」
「…まぁ、セクハラにならない程度ですけども」
「ははっ。それでもいいよ。綾小路が俺に興味を持ってくれた事は素直に嬉しいからな」
「…そう、ですか…」
少年のように笑った彼に不覚にも顔が赤らんだ。
それを隠すように、彼に背中を向け離れようとすると、後ろから声を掛けられる。
「さて。打ち合わせも済んだ事だし。…少し時間あるか?」
「あ、はい」
少しの危機感を感じながらも、私は仕事の延長でしっかりと返事をしてしまっていた。