【完】V.I.P〜今宵、貴方だけの私になる〜
「そう、睨むなよ。そんな顔しても俺を煽るだけだぞ?」
「なんで、こんなに私の事を構うんですか?」
「……はぁ…忘れるなとあれだけ言ったのに…」
「………、……」
見つめ合ったまま数秒の沈黙。
今度は背ける暇もなく、静かにキスが下りてきた。
音もない、キス。
意味の分からない、不透明なキス。
「そんな瞳で見るなよ、…忍…」
「それ、…止めて…」
「なんで、そんなに頑なになる?」
「そんなことより離して下さいって…」
「離さないと言ったら?」
キリリ…と口唇を噛む私に嬉しそうに微笑んでくる彼。
「…鬼畜」
「なんとでも?」
「ドS…」
「…それから?」
「スケベ…」
「それは、どうも。男として最高の褒め言葉だな…」
くくく、と喉を鳴らして笑う彼は、とても楽しそうで、私の体の力も何時の間にか抜けていった。