【完】V.I.P〜今宵、貴方だけの私になる〜

刺々しい言葉。
本当は、もっと毅然とした態度を取りたいのに…。
どうも彼の前では、自分のスタンスが崩れてしまう。


と、そこに少し場違いな程大きな電話の音が響く。
それは、彼のスマホの着信音だった。

彼は、片手でそのままここへ残れと指示を出しながら、通話ボタンをタップした。


「俺だ。何か用か？…あぁ、それならば、もうとっくに指示を宛てがってあるだろう？いつまでそのまま放っておく気だ？いい加減にしろ。自分の首をかけてででも遂行するんだな」


容赦のない言葉。
そして、どこまでも冷たい声。
聞いてる此方も自分のことを言われているようで、思わずヒヤッとするようなそんな地底を這うくらい低くて、先程まで私をからかって楽しんでいたのとは比べようもない…他人のような声。


そうだ。
この人の仕事への姿勢は大好きなんだ、私。

そんなことは、弱みを握られるかもしれないから、本人には絶対に言わないけれど。