【完】V.I.P〜今宵、貴方だけの私になる〜
ちら
彼は、こちらを向く。
それに私の背筋がピンと張ると、くすりと微笑んで…また話の続きをした。
さっきから、視線が合うとなんだかむず痒い。
ガラス越しで受けた物憂げな視線と言い、なんでこんなに居心地が悪うくなるものなのか…。
私は、腕時計を見やってから、小さく溜息を吐いた。
なんて、イレギュラーなんだ、この電話は。
相手が誰だとかは、全く気にならない。
ただ、会議までの時間が迫っていて、私は気が気でない。
仕事中は、なるべくそこ一本に集中したい。
先輩はその辺とてもスマートだったのに、私は全然だ。
もっと、頑張れ、忍。
負けちゃいけない。
ちりちりと痛み出す、小さな痣。
私は無意識にそこを指でなぞっていた…。