【完】V.I.P〜今宵、貴方だけの私になる〜
「お待たせしました」
私は、それだけ言うと、ぺこりと一礼して彼の横を通り過ぎ、人数分のコーヒーを用意する為に部屋を出た。
音も立てずに。
それは、鉄則。
サポートする者が、邪魔になるようなことはしてはいけない。
そう、先輩から叩き込まれている。
そこからの私の仕事は忙しない。
コーヒーを準備した後、まとめた資料を各自に配り、彼の横に立ちながら、全員の反応を頭の中にインプットする。
誰が、この企画に対して野心を持って取り組みそうか。
中心となる人物には誰がふさわしいか。
あとで、必ず彼に聞かれるだろう…だから、私は分厚い手帳に色々と書き込み、時折彼のフォローをしつつ、周りに視線を向けた。
この時間が、物凄く…興奮する。
と言うと、なんだか語弊があるけれど、それくらいアドレナリン物質が脳内に出ていく気がする。
そこで思い知らされるんだ。
あぁ、私はこの仕事が好きなんだな、と。
上に立つ人間に対しては、ちょっと…いやかなり難はあるけれど…。