【完】V.I.P〜今宵、貴方だけの私になる〜
それでも、やっぱり…好きだ。
きっと、その思いは彼にはバレているんだろう。
だから、こうして茶々を入れてくる癖に、私の仕事に支障をきたさないような配慮をしてくるんだ。
これで、彼のことを好きになれれば…いいのだろうけれど。
やっぱり…どこか腑に落ちない。
なんで、彼は私にこんなに絡むのか。
その真意が全く読めないからかもしれない。
「…じ?綾小路?」
「…え?」
「どうした?ぼうっとして?」
「あ、あぁ、なんでもありません。次の会議まで少し余裕がありますから、一度戻られますか?」
「ん。そうだな…じゃあ、戻るか」
「…要人社長?」
「なんだ?」
「……ほんっとに訴えられたいみたいですね?」
がっしりと掴まれた腕。
そこが、じんわりと熱い。
私は、なんとか冷静さを取り戻そうと、…今度は視線を逸らすことなく、彼を見据える。
「は、な、し、て…下さい?」
「嫌だ、と言ったら?」
「今度こそ、大声出します」
「じゃあ、…俺も本気出そうか」
「え…ちょ、、…っ」
少し強引に、抱き寄せられ、そのまま社交ダンスでもするように、体を捻られる。
近付く顔。
一瞬にして奪われ、深く押し込まれる…熱。