【完】V.I.P〜今宵、貴方だけの私になる〜
「たとえば?」
意味を分かっていてそう伺う自分も、どうかとは思うけれど…楽しくて愛しくて、言わずにはいられない。
彼女の口から聞きたくて仕方がない。
いつだって、その口唇から溢れてる言葉を、この身で感じていたいんだ。
「…そのニヤけた顔が物語ってるようなことですよ!」
もっと掻き乱して、やりたい。
ウワサなんて、吹き飛ぶくらい…自分のその魅力がどれくらい俺のことを惑わしているか、教えてやりたい。
「くくっ。最近の、お前は凄くいいよ」
そう言って笑えば、彼女は馬鹿にされていると思ったのか少しだけ声を大きくして俺に食って掛かる。
「…絶対いつか訴えますからね!!」
だから、俺はより涼しい顔で彼女に切り返す。
「その前に『嫌』が『良い』に変わるさ」
「…っ!もうっ!」
本当に、それはもうすぐなんじゃないかと思うくらいだ。
朱色に染まった顔が俺だけのものだと思うと、本当に堪らなくゾクゾクする。
彼女の評価が、「仮面をつけて」いても、「氷の女」でも、別にそんなものはどうでもいい。
必要なのは、俺の目の前でくるくると変わる彼女の温度だけ。