【完】V.I.P〜今宵、貴方だけの私になる〜
「ハイ!要人!久しぶりね!元気だった?!」
どん!とぶつかるようなハグをされ、俺は渋々背中に手を回した。
でも、掛ける言葉はどこまでもつれない。
「ああ。まぁな。それより、ジュリアン。本当に今夜、空いてるんだろうな?」
久し振りに会った高揚感なんて、そんな物はどこにもない。
とにかく俺にとって、時間は一秒たりとも無駄にしたくなかった。
…それが、彼女に関する事ならば尚更…。
「まぁ!何よ!会って早々に!本当に嬉しいお誘いかと思ったら、それって依頼なのよね?しかもこれ、何気にお願いじゃなくて、半ば命令じゃないの?!」
形の整った顔に、ムッとした表情が貼り付く。
それでも、俺は構わなかった。
「勿論。サシでお前と飲むほど暇じゃあない」
それを聞くと、ジュリアンは心底つまらなそうに「へぇ?あぁそう」と腕を胸の前で組んだ。
そんなちょっとした仕草にも優雅さを感じるのだから、こいつが引く手あまたなのが、よく見て取れる。
「相変わらず、酷い男ね…まぁいいわ。で?今回はどんな依頼なわけ?」
ジュリアンは、小首を傾げて俺に向き直る。
「ある女性を飾って欲しい。それで、それに見合うように俺をして欲しい」