【完】V.I.P〜今宵、貴方だけの私になる〜

髪の先をくるくると弄びながら、聞いてくるジュリアンに、俺はその言葉を待っていたとばかりに、早口で依頼をする。
それに対して、ジュリアンは一瞬の間を空けた。


「……は?」


怪訝そうな顔に、しっかりと頭上に散らばった疑問符。
察しがいいはずのこいつが、2度聞きしてくるとは思わなかったので、俺はバッサリと切り捨てた。


「二度はない。説明している暇はないんだよ」


俺はもう既に、デスクに座ってチャットトークするのに、画面を弄り出していた。
カチャカチャと部屋に響く、キーパンチの音。
刹那の沈黙。
それを破ったのは、ジュリアンの方からだった。


「女のコをドレスアップするのは分かったわよ。でも………なんで要人まで?」


そんな疑問を投げられるなんて、思わず俺はちらりとデスクの端に座り込んだジュリアンの方を見上げて、問う。


「ん?何か可笑しいか?」


至って真面目だと言う風に言って退けると、ジュリアンは暫く口をパクパクさせた後……噴き出した。
しかも、盛大に…。


「ぶはっ!あはっははっ…ちょ…やめてよ…っお腹が捩れちゃうじゃない!冗談はその性格だけにして」


その言葉に今度は俺の方がムッとする番だった。
一旦、パソコンから離れ、体をジュリアンの方に向けると、俺は溜息を小さく吐いて、大袈裟に両手を上げた。

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