【完】V.I.P〜今宵、貴方だけの私になる〜


「冗談なんて言ってどうする?何の得になる?大体、俺の性格は冗談なんかじゃない。ちゃんと社会に通じる範囲内だ。けしてアブノーマルなんかじゃないぞ」


大振りのジェスチャーは、ジュリアンに向けての意思表示にはとても都合が良かった。
いつもそれでなんとかなっていたから。
けれど、今回はそれは通用しなかった。


「あのね?それとこれとは話が別よ。アタシ、一応トップスタイリストなの。世界を股に掛けてちょーー…ぜつ、多忙な中要人の為にやって来たのに、ちゃんとした説明もなく、そんな依頼は受けられないわ」


ジッと見つめてくる、薄いブルーの瞳。
ふんっと鼻を鳴らして、俺を見つめる。
そこには、何か言い逃れの出来ない、オーラが漂っていた。


「…分かった。理由はこうだ。彼女を落とす為。以上」

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