【完】V.I.P〜今宵、貴方だけの私になる〜
「二度と人を好きにならないって決めたんです。もう二度と。きっと私…このまま貴方と恋をしてしまったら…ここにはいられない」


「……忍」

「だから、もう…」

「許さない」

「…え…?」

「俺から逃げるなんて。思い出せ、忍…頼むから…」


そう言いながら、震える彼女の手のひらへとキスをした。
そっと許しを乞うように…。
あの日と同じように……。


「…?!まさか……貴方、が…?」

「ああ、そのまさかだ。こんなにも近くにいるのに全く気付かれなくて、本気でどうでもいい存在なのかと思っていたんだ」

「そんな、だって……私…」


思い出してくれた事に安堵して、微笑む俺とは真逆に、サァーっと青ざめていく彼女。

けれど、俺は構わずに言葉を続けた。


「俺はこの1年、ずっと待っていた お前の気持ちは…?教えてくれ、忍。今すぐお前の心が知りたい」


明らかに動揺している彼女へと、そう言って視線を合わせようとすると、とん、と胸元を押された。


そこで生まれた二人の境界線。


「私は、貴方を受け入れられない……」


彼女はそう呟いて、つつ…と涙を零すと俺の腕の中から離れて行った………。

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