【完】V.I.P〜今宵、貴方だけの私になる〜
どうやって帰って来たのかさえ分からないくらい時間を掛けて部屋に戻ると、私はどうしたらいいのか分からず、ただ目の前で時を刻む時計の針だけを見つめていた。
「…仕事、辞めなきゃ…」
一人になってやっとまともな呼吸をした気がする。
そして、口にした第一声がその言葉だった。
つきん
胸が痛んだけれど、それを瞬きをすることでなんとかやり過ごす。
泣かない。
私はそう心に誓ったんだ。
もう、誰かの為に…男の人の為になんて涙を流さないと。
けれど、どうしようもなく零れてきてしまうこの温い雫は、知らず知らずの内に貴方に惹かれてしまった私の罪でしょう。