【完】V.I.P〜今宵、貴方だけの私になる〜
こんな気持ちになんて気が付かなければよかった。
こんなに浅はかで中途半端な想いになんて…。
ずっと、惹かれ焦がれていた人がまさか彼だったなんて…。
なんだかんだと過去に縛られ、前に進むことが出来ずに藻掻いていた私を、彼は一体どんな風に思っていたんだろう。
あの日、全てを失くして、ただの空っぽな塊と化した私に、何故彼はあんなことをしたのか。
嘘はないと、思う。
彼にとって一夜限りの恋を楽しむことはあっても、あの時のキスは真実だと信じたい。
じん…っ
手のひらに落とされたキスが私を支配していく。
もう、何がなんだか分からない。
それでも、心が警笛を鳴らす。
このまま流されてはいけないと。
そんな風に彼とこの恋を始めてはいけないと…。