【完】V.I.P〜今宵、貴方だけの私になる〜
「今から、他の仕事なんて見つかるかなぁ…」
そう、もう一度呟いてから…私はまた新しい雫を零した。
何時の間にか、彼のことが気になっていたんだと思う。
それが何時からなのかは分からない。
けれど、確実に育ててしまった恋心。
今更、この想いをどうこう出来ないから…本当は差し伸べられたあの手を取って、連れ去って貰えば良かったのかもしれない。
だけど、今彼の全てを知って…"彼"を知ってしまったら…私は今度こそ自分でいられなくなる。
それだけは分かるから。
それだけは、どうしても避けたいから。
私は彼の傍から離れよう。
もう二度と逢わないことにしよう。
…全て、全てなかったことに。
狡いと言われても構わない。
私は、これ以上傷つきたくなかった。
そして、私はその夜。
何度も、何度も辞表を書き直した。