【完】V.I.P〜今宵、貴方だけの私になる〜
そんな時だった。


不意にけたたましく鳴り出した執務室の電話の音。
少しだけ驚いてから、私は呼吸を整えて、ピッと通話のボタンを押す。


「はい、社長執務室の、あやのこ…」

「要人を呼んでちょうだい!」

「は…?」

「貴女にいちいち説明する義務はないわ。いいから早く要人に代わって!」


半ば金切り声でそう叫ばれ、私は片目を瞑りながら、



「少々お待ち下さい」



と言って、社長室の内線を押す。


「なんだ?」


低く耳に響く声。
思わず、仕事も忘れ縋りつきたくなったけれど、私は気を取り直して、


「社長、お電話です」


と言う。


「誰?」

「それが、名前は仰らず、ただ社長に代われと」

「そう。分かった。通して」


短い返答は、私に対して興味を失くしたも同然の声



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