【完】V.I.P〜今宵、貴方だけの私になる〜
夜の街は、果てがない程、きらびやかなネオンが大きく渦を巻いて…目眩がした。
人ごみに逆らうようにして、フラフラと宛もなく歩く。
彼の微笑んだ顔が、何度も何度も浮かんでは消える。
それを無理やり私は捩じ込んだ。
この喪失感は、自分の我侭だ。
彼はいつだって、真摯に私を見ていてくれた。
そうだったはずだ。
あの瞳に、嘘も偽りもないと思う。
なのに…。
そこから逃げたのは、私…だ。
途方もなく胸が痛む。
けれど、今の私にはどうやってそれを修復したらいいのか、術がなかった。
「好き」だという一言で片付けられない私達の間には、今…何がどう残っているのだろう?
キンッ
と、右耳に付けている彼が与えてくれた小ぶりのピアスが痛んで、涙がポロポロと溢れ出した。