【完】V.I.P〜今宵、貴方だけの私になる〜
きっともう逢わない。
こんな私じゃ逢えっこない。
流れてゆく、星の数程の感情を全て繋ぎ合わせても…。
貴方の傍にいられるのは、私なんかじゃいけなくて。
『忍…』
腰の辺りまで響く、甘くて愛しい声を心の中で繰り返し、私は熱い透明な雫を振り切ることで、漸く家路についた。
カツン、カツン、
6cmのヒールは、私の鎧で…力の源だ。
笑え、笑え、忍。
泣くな、笑え、忍。
泣いた所で、もう何もこの手にすることはない。
だったら、この際…開き直って堂々と前を向けばいい。
なのに…。
「…………っ」
涙は止めどなく溢れ出していった。
競り上がっていく感情に押し潰されてしまいそうになって、私はマンションのエントランス前で、立ち止まった。